3b

最後にゃ若き才能に涙を流し、三十路男Knock Out!!

少し前に話題になったが、「第3回日本ケータイ小説」の大賞作品kiki著『あたし彼女』を読んでみた。

なにを三十路男がケータイ小説というツッコミを甘んじて受けたいが、きっかけはネットニュースで見たネタで、パープルというペンネームを使い身分を隠して瀬戸内寂聴氏が書いたケータイ小説を読んでみたいと思ったところから始まります。そのうち寂聴女氏以外の作品も読んでみたくなり、色々読み進めていくうちに大賞作品『あたし彼女』にたどり着いた訳です。

まず読んでみると、文体に奇妙な感を覚える。横文字で下スクロールを意識した文章で無駄な改行、本当を「本と」と表記するなど、鼻をつまみたくなるかもしれないが、そこは若者文体だと思って、読み進めて欲しい。

しかしエンディングには、野獣系三十路男の私が情けないけど大感動で、読み始めからエンドまでノンストップで読み通してしまいました。いわゆるドハマリって奴です。

いつもながら詳しいストーリーは読んで頂きたいのだが、いわゆる遊び人で本当の恋愛を知らない23歳の"アキ"とひょんなことで知り合う、成功を手に入れたが悲壮な恋愛経験を持ち人生に満たされない三十路男の"トモ"とが織りなす恋愛ストーリーなのだ。

後書きで著者も明らかにしているが、このストーリーは事実を元にアレンジしているという。変な話、色々なことがドラマチックに起きるのだが、変にリアリティーがあるんです。特にある種の台詞の弱さなどは、推敲して練られたもの(kikiサン、しっかり練られていたらゴメンなさい...)というか、記憶の断片を紡いでいったなぁと思えるのです。

それは先に瀬戸内寂聴氏の作品を読んでいたからそう思うのかもしれない。氏はある種のフィクションのプロであり、文体などを若者風にして表現を弱めていても、読ませどころでは表現が強くでてしまいボロが出る(下手という意味ではなく、この場合逆に上手さが出てしまう)のだが、kikiさんは脆弱な弱い言葉で前へ前へ出てくるのだ。これは才能以上のなにものだろうか。

そういう意味ではこの10年で「メール」というモノが出来、若者はそのツールで文字で感情をコントロールするを表現方法が出来るので、結果的にもの凄い文章力がついたように感じるのは私だけではないだろう。

私もブログなどを書き始めて、早4年。一向に文章力は上がらない。なぜかといえば、メールで告白もしなければ、女を口説かないからである。私の主戦場はやはりトークであるからだ。ある意味、私が美声であればこのブログもポッドキャストでやった方が、数段面白いのではと思うが、それをある種、下手な文章表現でやるのも、また私の修行ではないか思って4年書いているが。

嗚呼、もう4年もやっているのに、また相変わらずの脱線癖。まずは恥ずかしがらず同年代の三十路男子諸君もケータイ小説、読んでみようぜ。

私もそうなので気をつけているが、三十路になるとやってもいねぇのに適当な経験で判断してしまうのがいけねぇ。いわゆる知ったかぶりだ。若者文化でもまずは自分から踏み込んで咀嚼する、そこから自分なりの判断すればいいのでは。しったかぶりのオジサンは嫌われますよ。

ただ一ついいかい? なんで男子でケータイ小説書く奴が居ないんだろう。頼むぜ、若者男子。そっちの方が三十路ジジィは心配でたまんないぜ。