都会のビルのあいだに爽やかな風が吹く
ひょんなことから仕事ではじめて知り合った若い女性に相談された。
『実はあたし、来月で会社辞めて郷里に帰るんです』へぇ〜、せっかく仕事でごいっしょできたのに残念ですね、と決まり切った挨拶を150cmあるかないかの小柄な彼女に言った。話の流れでなんでまたお仕事を辞めるのですか、と問うと彼女は...
『今、25なんですけど何かを変えるなら今しかないと思って。』そうだよなぁ、俺だって歳の割には貰っていた年収を投げ捨てても、デザイン学校行ったのは確か25歳だったなぁ。
『Webの学校行って、ウェブデザイナーになりたいんです』じゃ俺と商売敵になっちゃうね、なんて軽妙なジョークを言ったはいいものの冷静に考えれば、彼女は郷里帰るんだよ、そんな心配はないでしょう。でも、地方は仕事ないんじゃないの...大丈夫、彼女の郷里はいま熱い地方都市。人生以外となんとかなるもんだよ。案ずるより産むが易しってやっぱりあると思うので。
『でも色々覚えることが一杯ありますよね...どれから手をつけていいのか...覚えられるか不安で...』それが覚えられないとこの商売続かないんだよね。だけど素敵なかわいいお店だって、アーティスティックなギャラリーだって、気の合う仲間と内輪で集まれる場所だって、このWebという仮想空間につくれるんだ。アイデアしだいで、世の中に無い人が喜ぶ仮想空間を作ることが出来るんだ。
『元々、大学も地方で地方支店配属希望だったんですが...約2年東京にいて...』帰る場所がある、憧れます。俺はこんなシミったれな東京で商売するしかないんですから。もう若くもないし、キャリアチェンジももう出来ないからうらやましくて。
でも帰る場所があるなら、帰る方がいいよ。東京はこの日本をなにも変えることはできない。日本中を旅してわかったんだ。きみの郷里から、つまり地方からこの日本を変えるしかないんです。つまりきみが日本を変えるんですよ。
個人的な意見ですが、
「まだまだ若いんですから頑張ってくださいね、辞めるまではよろしくね」と言って別れました。
いいな、若いって。それだけでいい。自分の想いに忠実にがんばって下さい。俺も世の中の人と比べて好き勝手やってきたけど、なんとか生きてるし、それに対しての後悔もないからね。
この話はフィクションです。